里山で遊ぶ

ゆるい午後 遠回りする 帰り道
のどかな午後の時間を満喫できたらと思う。

夏休み

 

私は 自然が豊かで 森や湧水が豊富な里山の麓に 生まれ育ちました。
家から50mくらいの場所に農業用溜池が二つ、
回りは ず~っと一面 田んぼと畑が続き 所々に家が建ってました。
小学生の時 溜池の奥の里山が宅地造成で ブルトーザーがはいり 
里山を平らにしてしまいました。


休みになると 僕らは その平らな場所で野球をして
夏のジリジリした灼熱の炎天下に帽子も被らないで 走り回ってました。
点がはいると ご褒美に 造成地と溜池の間にある小さな畑で栽培されてた
イチゴを点数分だけ失敬してました。


ある日 いつものように野球をしていた時のことです。
造成地の更に奥にある里山の天辺に NHKの中継基地がありましたが、
パラボラアンテナから少し離れた位置に 
大きさがバス1台分くらいで 卵を横にしたような形の金色に光った物体が
浮いた状態で静止していました。


『あれは 何だろうね?』と みんなで話してましたが、一人が
『あれは電波だ。パラボラアンテナに向かってるところだ。』
と言うと、みんなが納得し 野球を続けました。
野球が終わった時に その場所を見ましたが もう その物体はありませんでした。
今 想うと 当時の田舎の子は みんなバカですよね。
電波が見える訳ないんだけどね。


1学期最後の日 いよいよ 夏休みになります。
手提げバックに 絵や習字、学校便り、通信簿などを ねじ込んで
猛ダッシュで学校を出ると みんなで溜池に走っていきました。


溜池は5月の田植えの時に 水を排出した後は 池の水をカラッポにするので
池の底が干からびて ヒビ割れた状態となり、
僅かに 湧水がチョロチョロと流れ込んで 
私たち子供の膝ぐらいまで 溜池に湧水が溜まっていました。


その場所で みんなで鬼ごっこをしてました。
走り回って逃げるのですが ヒビ割れに足が挟まると
ズボッと倒れこみ 半ズボンがびしょ濡れです。
更に 数か所 もっと深みのヒビ割れがあり 
鬼が そこに逃げ回ってる子供を追い込むと 
追い込まれた子供は 『ワ―‼』と叫びながら 
胸あたりまで ズボボボボッ とはまってしまいます。
遊び始めて そんなに時間がかからない内に 全員が 全身びしょ濡れです。


手提げバックの方を見ると 何枚もの紙が 風に舞って宙を飛んでました。
ヤバイ‼
手遅れですが 紙を全部 回収しましたが 通信簿がビショビショです。
万年筆で書いた先生の文字が滲んでしまい 何が書いてあるのか分かりません。


家に帰って 怒られたかどうか記憶がありません。
水風呂にはいって 縁側に寝っ転がると
軒下に 半ズボンやランニングシャツと一緒に通信簿が干してありました。
半ズボンの向こうには 真っ青の空と ところどころに
真っ白なちぎれ雲が浮かび 穏やかに 風が歌って行きました。


今更なんですが…
あの大きな金色に光った物体ですが、
今の私が見たら 太陽光に××が反射して…どうのこうのと
二度と振り返ることなく 通り過ぎるでしょうが、
ひょっとしたらですけど、
あの金色に光った物体は…
あの時のあの場所だけの バカな僕らだけに見えてたのかもしれません。
あの時に 『電波だ‼』なんて言わなくて 誰かが
『あぁ===‼ 宇宙船だ‼ 僕らを乗せてください‼』
とお願いしてたら 僕らだけの宇宙旅行に行けたのかもしれません…
 


少年時代  井上陽水


夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれに さまよう
青空に残された 私の心は夏模様


夢が覚め 夜の中
長い冬が 窓を閉じて
呼びかけたままで
夢はつまり 思い出のあとさき


夏祭り 宵かがり
胸のたかなりに合わせて 
八月は夢花火 私の心は夏模様


目が覚めて 夢のあと
長い影が 夜に伸びて
星屑の空へ
夢はつまり 思い出のあとさき


夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれに さまよう
八月は夢花火 私の心は夏模様

百獣の王

海さんは 今日も朝っぱらから 絶好調です。
私の前を 帽子を目深に被り 通り過ぎる時に一言。
『帽子を被ったオバちゃんは敵なしだよ‼』
『ん…?無敵なの?』
『そうだよ‼無敵だよ‼』
『無敵って その出で立ち 百獣の王でげすな。』
『ハハハハハ…』
何処へ行くのか分かりませんが 玄関からゲップの音が聞こえます。
目深に被った帽子、眼鏡、大きなマスク、それと
濃い群青色の町工場の作業着みたいな登山用パーカーを着て 何処へ行くんでしょう?
綺麗な音楽を こよなく愛す私にとって 
デリカシーの『デ』もないこの空間と濁音は ちょっと厳しいです。
せめて 
今日一日 何事もなく 平穏な日でありますように…

 


コロナウイルス騒動の前、道の駅の駐車場での車中泊が問題になっていて
TVで特集をしていました。
特に人気のある道の駅の駐車場の 富士山が見える場所からのリポートでした。
ベンツのミニバンの前で簡易テーブルをひろげ 
コーヒーを飲みながらくつろいでいる 車中泊をしてる人にレポーターが聞きます。
レポーター『富士山が綺麗ですね!』
ベンツの人『何回か ここに来てますが 富士山は格別です。』
『昨日から 車中泊ですか?』
『そうです。富士山を見ながらの 朝のコーヒーは最高です。』
『これから どちらへ?』
『まだ決めてなくて これから調べようかなと…。』
『ところで 一緒の方は まだ車でお休みですか?』
テーブルには コーヒーカップが2つありました。
『いや、オレ一人だよ。これはカミさんの分。』
と言って、コーヒーカップを指さし、
『1年半前に カミさんは亡くなったんだよ。一緒に日本一周が約束だからね。』
聞くと 奥さんと二人三脚で工務店を営んでいたが
奥さんが亡くなられてから間もなく 従業員もいたが
働く気持ちが切れてしまい 会社を閉めてしまったとのことです。


会社を閉じて すぐに、
『体が動かなくなって 会社を閉じたら二人で 一緒に日本一周の旅行をしよう』
という 奥さんと約束していた旅に出たとのことでした。


このベンツの方の家に 後日 レポーターが訪問しました。


奥さんが亡くなってから 日本中を旅行して
ほとんど 家に帰ってないそうです。
薄暗い部屋に明かりを灯すと 炬燵がありました。
綺麗に掃除がしてあり、柱時計も動いていました。
娘さんが定期的に 部屋の掃除と旅先に郵便物を送ってくれるそうです。


レポーター『なんか 暫く留守をされてるように見えないですね。』
ベンツの人『娘に綺麗にしてもらってるからね。』


季節外れの炬燵の上に 湯吞が一つありました。
『これは 奥さんのですか?』
『あぁ、作業場で突然倒れて 救急車で運ばれて それっきりだから…
 この部屋は その時のままなんだよ。
 この湯飲みも その時のままなんだよ。
 娘には 絶対片づけるなと言ってるんだよ。
 この湯飲みを片付けられる日が いつかは来るだろうけど、
 今は これを片付けると 全てが終わる気がして…』


話の途中で 毅然としてた顔がクシャクシャになると 突然 席を立ち 
部屋を出て暫くしてから戻ってくると
『車中泊の仲間から電話で 福島にいるって言うから これから福島に行くよ。』


女性は年齢を重ねる度に 心臓に毛が生えて 百獣の王となる が、
男性は年齢を重ねる度に 心臓がガラスのように脆くなり 弱っちい泣き虫になる
そこんとこ ヨロシク‼


私は神様を信じません。
が、仮に神様がいるとしたら 
海さんより私の方を長く生きるようにするでしょう。
何故ならば、私の方が何倍も 海さんより『いい人』だからです。
その時 一人の私は どうするんでしょう…


 たしかなこと   小田和正


雨上がりの空を見ていた 通り過ぎていく人の中で
哀しみは絶えないから 小さな幸せに 気づかないんだろう


時を超えて君を愛せるか ほんとうに君を守れるか
空を見て考えてた 君のために 今何が出来るか


忘れないでどんな時も きっと そばにいるから
その為に 僕らは この場所で
同じ風に吹かれて 同じ時を生きてるんだ


自分のこと大切にして 誰かのこと そっと想うみたいに
切ないとき 一人でいないで 遠く 遠く離れていかないで


疑うより信じていたい たとえ心の傷は消えなくても
なくしたもの探しに行こう いつか いつの日か見つかるはず


一番大切なことは 特別なことではなく
ありふれた日々の中で 君を
今の気持ちのままで 見つめていること


君にまだ 言葉にして 伝えてないことがあるんだ
それは ずっと出会った日から 君を愛してるということ


君は空を見てるか 風の音を聞いてるか
もう二度と ここへは戻れない
でも それを哀しいと 思わないで


一番大切なことは 特別なことではなく
ありふれた日々の中で 君を
今の気持ちのままで 見つめていること


忘れないでどんな時も きっと そばにいるから
その為に 僕らは この場所で
同じ風に吹かれて 同じ時を生きてるんだ


どんな時も きっと そばにいるから