ゆるい午後にGO7GO

ゆるい午後 遠回りする 帰り道
のどかな午後の時間を満喫できたらと思う。

傘がない  その2

大雨が降ると麻雀をするかギターを弾くかして部屋で雨が上がるのを待っていた。
時折 実家から傘を持ってくる住人がいたが、ちょっとすると無くなってしまってた。
ただ 傘がなくても 無いなりの対処が出来るので特に不便は感じなかった。
その1でも書いたが どうしても大雨の中を外出しなければならない時は
近所の床屋さんで傘を借りていた。正確に言えば、床屋のお客さんが忘れた傘が
2,3本あり それを貸してくれていた。傘を借りれるのは年齢順だったため、
1年生の時は傘を借りることはほとんど出来なかったと記憶している。


その床屋さんは 実家からの電話を取り次いでくれていた。
実家から床屋さんの電話に連絡すると、おばちゃんか子供が
『実家から電話がきたよ~。』って私たちの棟まで呼びに来てくれてた。
今 思い出しても 何て親切な床屋さん家族だったんだろうと思う。


床屋さんはおばちゃんが一人で切り盛りしていて、子供は4人いた。
男性1人、女性は3人で女性はともに美人であった。


長女は私とS君が下宿先に入居する1年前に婚約者を交通事故で亡くしていた。
どちらかと言えば、その当時は暗い感じで ほとんど喋ることはなかった。
18歳の男子から見れば、25歳で彼氏がいなく おしとやかで影がある 
それだけで相当の美人なのに 実際も黒木瞳に似ていて かなりの美人だった。
その長女に何故か、S君だけが気に入られていた。何故 ブ男のSが・・・。
私には羨ましい限りだった。
長女は時計、貴金属等を販売している大きな店に勤めていてセールの
チラシの折りたたみをする短期のアルバイトの話をS君に持ってきていた。
S君の追加要員で私は数度 そのお店でバイトをしたことがあった。
私とS君以外は40~50歳の女性が4,5人いて単純作業をしていたが、
女性は仕事中も 大変良くお喋りをされ 私とS君の素性を根掘り葉掘り聞かれた。
私がお金が無くなるとすいとんを食べる話をしたときは、私と同じくらいの子供を
持ったおばさんが不憫に思ったのか、白菜やお米などを食べてねと
家から持ってきてくれた。
おばさん達にはS君ではなく私が気に入られていた。これってマダムキラー…?


次女は後回しにして三女は私達と同じ年で高校を卒業後、家で花嫁修業をし
翌年の3月に元下宿先の住人と結婚することが決まっていた。
おおらかで何事にもあっけらかんとして 長澤まさみにかなり似ている美人だった。
おばちゃん家で散髪して『今から映画に行く』と言うと、『私も連れてって。』と
三女の声が。結婚前の女性なので本当は違うけど
『”男はつらいよ”を見に行くのでダメダメ…』なんて あわててその場を後にした。
結婚前の女性と二人で映画を見に行くなんて 当時はダメな雰囲気でした。
同年代の女性と喋るなんて ほとんどしたことなどなく
フレンドリーに話しかけられるので逆に これも苦手でした。


私はこの床屋のおばちゃんに気に入られていた。
時々 床屋さんが講習をする時に髪形のモデルとして 
おばちゃんに連れられて講習会に行った。
そこで髪をいじるだけで 結構良いバイト代をもらってた。


次女は一人暮らしをしていた。私が下宿先に入居する前、おばちゃんとかなりの
バトルをして家を出てアパート暮らしをしたとの事だった。
下宿先の住人は次女については多くを語らないが、かなりのヤンキーだったらしい。
ただ 身長は170cmくらいで細身で 初めて見るような超美人だった。
下宿先の住人は 誰もその次女に寄り付かなかった。美人すぎるから…
次女は私が入居した年の初めくらいから 時折 おばちゃん家に寄り付くようになった。
おばちゃんは喜んでいたが、何故か 次女が家に戻った時に 私を呼んだ。
私が初めて次女を見た時は あまりの美人なので 黙って時折 横目で見ていると、
次女は私の悪口を言い始めた。
服装、髪形、ちょっとしたしぐさに対して いちいちきつい言葉で悪口を言う。
それも若干斜に構え 上目遣いで言ってくる。
初対面なのに ひどい事を言うなと思ったが おばちゃんが居たので我慢した。
なぜ下宿先の住人が次女に寄り付かないか理解できた。
それから 次女が家に戻るたびに私はおばちゃんに呼ばれ 次女に悪口を言われ続けた。
何度も続いたので適当な理由をつけて行かなくなった。 2回目くらいから
おばちゃんが私をこの次女と結び付けようとしているのが薄々分かっていた。
多分 次女も分かって悪口ばっかり言ってたのかもしれない。


大雨が降ってた時の事である。おばちゃん家に傘があるか聞きに行った。
暇だったので Jデパートにコーヒーの豆を買いに行こうと思っていた。
その時に次女がいた。久しぶりにあって ちょっと気まずかったが、見てみぬふりを。
おばちゃん家に予備の傘はなかった。おばちゃんが『ない。』と言ったが、次女が
『どこ行くの?』と聞いてきた。『Jデパートにコーヒー豆を買いに行く。』と言うと
『私もJデパートに行くけど一緒に行く?』と言った。
次女の目を見たが、私をバカにしている目ではなく普通の感じだった。
おばちゃんに助けを求めて見たが その場の雰囲気で何となく断れなくて
行かねばならぬ羽目になった。雨の中を傘をさして一緒にバス停に。
バスに乗っても私はほとんど話さず、次女が一方的に喋っていた。
バスを降りてJデパートに入るときに 次女が私の腕に手を回してきた。
ガーン… こんなこと私は無理です。始めての事です。丁重にお断りしました。
これは絶対 私をおちょくっていると思った。次女は軽い冗談のつもりでも
私は恥ずかしくて顔が真っ赤になってたと思う。


ただ今思い返すと その後の次女の態度から冗談では無かったような気がしてる。


センスがイマイチの服を来た貧乏学生が2歳年上の超美人を連れて 
しかも腕を組んでたらヤンキーのターゲットになりかねない気もした。
早く この場から逃れたかった。
コーヒーの豆を買うと強引に次女と別れた。
大雨の中をびしょ濡れになりながら 下宿を目指し帰った。


当時は色んな意味で無理だと諦めたが、そこで踏ん張っていたら
私の人生は大きく変わっていたかもしれない。



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